大きな茶碗で抹茶を味わう「新春初釜大茶盛式」が奈良の西大寺で行われました。
「大茶盛式」は、鎌倉時代に西大寺を再興した叡尊上人が、神社に献じたお茶の残りを参拝客にふるまったのが始まりとされています。
大茶盛の由来は、叡尊の西大寺伽藍も再興され、その祝いも兼ねて御修法(または修正会)が執り行われ、昼夜不断で「国家安泰・万民豊楽」を祈り14日に結願しました。叡尊は、伽藍復興は自分の力でなく、むしろ西大寺鎮守の八幡社の神様が守護してくださったおかげと考えられ、1日置いた16日に寺の西方に鎮座する鎮守八幡社に参詣され、神前にお礼を込めて献茶されました。その時は時節柄、野山や社殿は深雪に埋もれていたと伝えます。現在、大茶盛席の上段の間には、その時の光景を、綿で雪景色をあしらった松樹と祠の床飾りをしつらえています。さらにその当日は、社頭に多くの村人も参詣していましたが、叡尊はその余服(残茶)のお茶を参集の村人一人一人に自ら振舞われたと伝えます。
鎌倉時代はまだ日本に本格的にお茶が伝来して間もない頃で、まだまだ日常的な嗜好品として喫茶されるものではなく、むしろ薬として珍重されていました。
現在、大茶盛は寺内の光明殿で行われていますが、茶道具はまさしくキングサイズ。茶碗は直径30㎝、高さ20㎝、水指は直径40㎝、高さ30㎝、茶筅は長さ35㎝、周囲35㎝と茶道具どれも相応しいものです。
この日が和気あいあいとした雰囲気の中、5人ほどで大きな茶碗を順に回しながら茶を味わいます。和みあい、結束を深める「一味和合」の理念を表すそうで、参拝者は時に茶碗を支え合いながら楽しまれていました。叡尊の時代はお茶の作法もそうなかったので「自由にくつろいでお飲みください」とのことでした。