奈良国立博物館では、1月15日(水)~3月16日(日)の期間、なら仏像館において「秘仏 深大寺 元三大師坐像ー日本最大の肖像彫刻ー」の特別公開を行います。
東京都調布市にある深大寺(じんだいじ)は奈良時代の天平5年(733)開創と伝える古刹で、飛鳥時代後期(白鳳期・7世紀後半)の金銅仏、国宝・釈迦如来倚像を所蔵することでも有名です。この深大寺の元三大師堂で秘仏(50年に1度の御開帳)として安置されているのがこの元三大師坐像です。
元三大師とは、平安時代中期に天台座主として比叡山の復興に尽力した慈恵大師良源(912‐985)のことで、その命日が元月(1月)の3日だったことから「元三大師」と称され、その存在が神格化されていき、外敵や飢饉を退ける「厄除け」の力があるとされ、彫像が数多く造られ礼拝されてきました。
本像は、寄木造の坐像で、その像高196.8センチメートルあり、頭・体幹部は複数の材を寄せて造られ、内刳(うちぐり)を施し、割首しています。当初は玉眼でしたが、現在は両眼とも木製の目をはめこんでいます。表面の彩色は後世の補修です。深大寺の元三大師が制作された経緯は明らかになっていませんが、その造形から鎌倉時代末期の作だと思われます。蒙古襲来(元寇)以降に多く行われた異国退散祈願のため、鎌倉幕府などの有力者の後押しがあった可能性が指摘されています。張堂興昭住職によると、源範頼の子供が深大寺の住職となっているため鎌倉幕府とも縁が深かったのではないかと話してくださった。
見開いた目に大振りな鼻と口、頬骨の秀でた精悍な顔立ちは、他の元三大師像に見るような定型化された容貌とは異なる生々しいもので、日本の肖像彫刻の中でも特異な存在として注目されます。
深大寺の元三大師像は50年に一度だけ御開帳される秘仏なので、多くに人の目に触れる機会はめったにありません。令和3年(2021)に東京国立博物館で開催された特別展「最澄と天台宗のすべて」に出陳され注目を集めましたが、その後奈良国立博物館の文化財保存修理所で3年をかけて矧目(はぎめ)の補修や剥落止めなど本格的修理を実施し、修理完了を記念して、東京以外では初めてとなる特別公開が奈良国立博物館で実現されました。
奈良国立博物館での展示終了後は深大寺に里帰りし、4月26日(土)~6月2日(月)の期間、元三大師の大開帳が特別に行われたあと、再び秘仏として50年に一度の御開帳となります。
日本最大の肖像彫刻の迫力あるお姿を、このまたとない機会に間近に拝願しご覧になってください。