兵庫県立美術館では、1月17日に阪神・淡路大震災から30年を迎えるにあたり、公益財団法人伊藤文化財団の寄贈によって、彫刻家・青木野枝氏の野外作品「Offering/Hyogo [(よみ)オファリング/兵庫] が同館「風のデッキ」に新たに常設設置されました。
「Offering」には、日本語でいう「オファー」の意味とは別に、「捧げもの」という意味があるそうです。作品は高さ約3m、長さ約12mの鉄製(コールテン鋼などと呼ばれる耐候性鋼の種類)。鉄を溶断して制作し、制作期間は2024年5月から2025年1月の約9か月とのことです。
青木野枝氏によると、「阪神・淡路大震災のメモリアルを作るということで、震災の犠牲者の方々、また全ての生きるものたちに捧げる気持ちで制作しました。100%ぎりぎりで、私の今までの作品の中で一番いい作品となりました」とのことでした。
兵庫県立美術館 作品野外設置によせての作者青木野枝氏のコメントを全文掲載いたします。
作品名 《Offering/Hyogo》
ここ兵庫県立美術館は海と山の狭間にある。
そしてこの設置場所の最大の魅力は、強い風が吹き抜け、頭上の空を太陽が動き、時に暴風雨に晒されるところだ。
曖昧な空間では決してない建築の中に彫刻を置くということ。
そして曖昧でない風景を借景とする土地に置くということ。
この場所の特性を活かした彫刻をつくらなければならないと思う。
ここに置く彫刻は、内部を風が吹き抜けるものが良い。
ここは人だけが歩く回廊ではなく、六甲山からの風と、海からの潮風が音を立てて吹き抜けていく。
この強い建築と強い自然の狭間に、風や光の動きを彫刻として表現したいと思う。
海と山の間にあるもの。
そして空と、空の下で生きる私たちの間にあるものとして。
彼岸と此岸の間に置かれるこの彫刻を
阪神淡路大震災の被害を受けられた全ての方々に捧げます。
2025年1月10日 青木野枝
常設展示室5では、「風のデッキ」に新たに設置された青木野枝作品「Offering/Hyogo」に関連する資料等も紹介されています。